洒落たバーでカシオレを頼んだ男の話

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  その時の僕はそそっかしい雰囲気がにじみ出ていただろうか。 マスターは完成したそれを足早に僕に届けにきてくれた。 「おまたせしました」 目の前に置かれたカシスオレンジ。 こいつをちびちび飲みながら、僕はあの人を待とうと思った。 縦長のグラスに注がれたコレは……カシスオレンジのはずだよなぁ。 僕は居酒屋に行くとき、はじめに頼むのはいつもこれだ。 アルコールが鼻につかないし、なにより甘いし。後でビールは嫌でも注がれるし、辛い気持ちはいち早く甘いドリンクで沈めたくなる。 でも目の前のそれは、普段見ているものよりも暗色がかっているように思えた。
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