眼福

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ボロボロになった立ち入り禁止のテープを、私達は潜り抜けた。 昔は警察が24時間見張っていたけど、今は近づく人すらいない。 「簡単に入れたね」 「出たら100%死ぬと言われているのに、行く馬鹿はいない。見張りの必要がない」 「いないかなあ」 私はなんだか可笑しくなって笑ってしまった。 鉄の階段を黙々と上る。無機質な二人分の足音だけが地下に響く。 階段の終着点は、まっくろな私達の”空”だ。 「着いた」 ”空”に取り付けられたハッチの取っ手は、錆び付いて不気味な色になっていた。 「知ってるか、使われている金属によって錆びの色が違うんだ」 「知っててもなにも役に立たないよ」 「そうだな」 あなたは取っ手を持つと、力いっぱい回し始めた。 錆びを剥がすようないやな音を立てながら、取っ手は少しずつ回った。 やがて、ごおんと鈍い音をたててロックが開く音がした。 「開けるぞ」 そう言うと、まったく躊躇もなくハッチを開いた。 「見える?」 地上に出た私たちが最初にみたのは、圧倒的な青だった。 「何、これ」 そういえば、前に教わったんだった。 空は、青い。
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