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触れそうな距離に体を乗り出す。
「お前のチョコレートが欲しい――」
顔にかかっていた、こぼれた髪をすくって、そっと耳にかけた。
今、許される、唯一のコト。
「って、言ったら?」
「……」
まん丸に柊の黒い目が開かれる。ひどく近い証拠に、見上げている倖之の影が映っていた。
ややあって、目がほんの少し、伏せられて。
そうすると、ひどく大人びて真剣な――見たこともない柊に。
はっと息をのんだのは倖之の方だ。
「ゆ、きのちゃん……」
「……ああ」
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