好きなのはビターテイスト

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「バレンタインは、嫌いだ」 「――っ!?」  衝撃に、柊が固まった。目を丸く見開いて、しばらく瞬きだけを繰り返した。 「……え?」 「バレンタインは、嫌いだ。大嫌いだと言ってもいい」 「ええっ!? なんで!?」 「……」 「日本中にチョコが溢れるのに!? 一年に一回しかないんだよ?」 「二回もあってたまるか。なくなりゃいいんだよ、意味が分からんチョコの日なんてな」 「あるだけで楽しいよ! お願いだからなくさないでよ」 「俺にそんな権限はないっ」  また意味不明なことを、と眉間を押さえる。 「大体、こんなことしているのは日本だけだぞ? いっそアメリカに生まれたかったぐらいだ」 「そこまで!?」  柊ががっくりと膝をつく。がーん、と顔に書いて冊子を落とした。 「倖之ちゃんが……倖之ちゃんがバレンタイン撲滅派だった……」 「そんな派閥があんのか」 「ホワイトデーも撲滅派?」 「どーでもいいな。バレンタインがなくなったら消えるだろ」 「……何てこと言うの……」  よろよろと、柊がこたつにもぐりこんだ。カタログを集めて積み上げ、枕のように頭をのせる。 「どーして……いつからなの。チョコ好きはバレンタイン歓迎派だと思っていたのに」     
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