episode 翔

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聞いてくるんだよ。俺その子知らないんだけどさ。友人の彼女かな?って思って承諾したんだよ。30分後に来た相手見て驚愕したね、そいつ男なんだよ。清己って書いてきよみ。なんも疑ってなかったからさ、先に言えって話だよね。」 その話に光は笑ってくれた。なぜか分からないけど、それがものすごく嬉しくて、もっと笑って欲しくて他の新入社員には目もくれず話し続けた。きっと、俺はその日からずっと恋をしているのだと思う。 告白をしたのはそれから3ヶ月経った後だった。所属が違うということがネックになり、なかなか話すことも難しくなっていた。出張令が出たとき以外はなるべく早めに家を出て彼女と挨拶を交わし、2回目のデートで告白をすると慮外にもすぐに承諾をもらった。 数ヶ月後にそのときの心境を聞いてみると、 私も初めて会ったときから気になっていたの とはにかみながら白状した。それがあまりに愛おしくて肩を支えながら押し倒した。光の身体は細身な分強く抱くと壊れてしまいそうで、慎重に扱った。羞恥で火照った全身に興奮したのを特に覚えている。 それから同棲を始めたのは3年経ったころだ。 それは彼女からの提案だ。少なくとも2年以内には、という彼女の言葉に遅れをとった俺は、せめて格好つけようと思い翌週には彼女を連れて不動産店舗へ向かった。 同棲してわかったこと、光は料理が多少下手だ。見た目的には極普通の美味しそうな料理なのだが、味付けが薄いか濃いかのどちらかが圧倒的に多かった。それが俺はなんだか可笑しくて、今日はどっちだろうと考えながら食べるのが楽しかった。 そしてもう1つわかったこと、それは多分、人からの評価を無駄に気に掛けるところ。直接言われたわけではない。ただ光の様子を見ていると、俺以外と行動や接触をしている人物をほぼ見かけないこと、異様に俺の顔色を気にすることがすぐ浮かぶ。さすがに月日が経てば少しのいざこざや口喧嘩をするときはままある。その際必ず、嫌いになったの?や嫌わないで、と不安の色を掲げながら聞いてくる。 世間一般で言えばめんどくさい女の上位に入るだろう。こちらから反論させてもらうと、俺は嫌いなやつとは喧嘩なんてしない。喧嘩に使う怒りのパワーを嫌いだと思っているやつに向ける気もしない。それは光だって間抜けではないから心の深部では当然分かっていると思うが、聞かずにはいられないのだ
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