第1章 残酷な運命

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「マスター…モスコミュールもう1杯…」 「お客様、差し出がましいですが、もうそろそろお止めになられたほうが…」 「いいのぉ!今日は飲みたい気分なんだからぁ…」 私の様子を心配しつつ、マスターは私の5杯目となるモスコミュールを作り始めた。 あの電話の後、私はフラフラと近くにあったこのバーへと入った。 小さいながらも雰囲気もあり、初めて入ったが居心地が良い。 何より、このマスターの柔らかい雰囲気に癒され、居心地の良さを倍増させているように感じる。 お酒はもともと弱いほうではないが、さすがに少し頭がフラフラしている。 それでも、私は飲むことを止めなかった。 頬杖をつきつつ飲み物が出来上がるのを待っていると、お店の扉が開いた音が聞こえた。 「よう、マスター」 「月村(つきむら)様、いらっしゃいませ。お久しぶりですね」 「あー…ちょっと忙しくてな」 マスターに「月村」と呼ばれて入ってきたのは、1人の男性だった。年は30代くらいの落ち着いた雰囲気の人で、スラリと高い背にスーツをしっかりと着こなしている姿はとても様になっている。顔立ちも整っていて、正に「イケメン」と言うに相応しい。 マスターが名前で呼ぶくらいなので、きっとここの常連なのだろう。     
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