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見ず知らずの、しかも今会ったばかりの人に心の内を読まれてしまうほど、私は寂しい雰囲気を出していたのだろうか。
もしくは、彼が女性を口説くのに慣れているか。
(…きっと後者だな)
私が自分の中だけで結論を出している間に、彼はマスターにジントニックを注文していた。
「あなたは常連なの?」
「まぁな。こじんまりとした店の雰囲気が気に入ってるんだ。それに、何よりもマスターが良い男だからな。つい話し込んで長居しちまう」
「そう言っていただけるのは光栄ですね」
マスターはニコリと笑みを浮かべながら返しつつ、彼の注文したジントニックと私のモスコミュールを差し出した。
「てか、アンタ結構飲んでるみたいだけど大丈夫か?」
彼は私の様子を見ながら少し心配そうに声をかけてきた。
「だいじょーぶ。それに…私だって思いっきり飲みたい時もあるんだから」
「…そっか。まぁ、誰にでもそんな日もあるよな」
そう言った彼の表情は、どこか自嘲気味に笑っているようだった。
「まぁ、そういう時は誰かに話すのが1番だ。ほら、話してみろよ」
「どうして見ず知らずの人に話さないといけないのよ」
「見ず知らずの人の方が話しやすいってこともあるだろ。これも何かの縁だよ。話したくないなら無理にとは言わねぇけど…少しは楽になるんじゃねぇか?」
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