第3章 歯車は動き続ける

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あれから1週間が経った。海斗とはあの日以来プライベートで会っていない。簡単に会えないことは分かっているが、仕事中は仕事の会話しかできないため、少し寂しいものがあった。 それでも、ふとした時に向けられる海斗の優しい眼差しや、さり気なく触れられた温もりが嬉しくて、仕事中という事を忘れて顔がニヤけてしまいそうになるのを必死で堪えていた。 そんなある日、大事な話があるということで、朝のミーティングに社長である姉さんが急遽やってきた。 「皆さんの頑張りもあり、この度、沖縄にアムール・マリアージュの支店ができることになりました!」 声高らかに報告された事は、新しい店舗開設についてだった。 様々な地域に支店があるアムールだが、沖縄県は初出店となる。 そのことに従業員達は大きな拍手でこの知らせを喜んだ。 「あともう1つ…。羽奈」 「は、はい!」 急に名前を呼ばれ、弾かれたように私は返事を返した。 「羽奈には沖縄支店の支店長をやってもらうことになったから。よろしくね」 「え…?」 思いもよらない言葉に、私は言葉を失った。 そんな中でも変わらず綺麗な笑顔を浮かべている姉さんを、私は何故だか少しだけ怖いと感じたのだった。
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