第1章 残酷な運命

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彼はジントニックの入ったグラスを持ち上げつつニコリと微笑む。 その姿がバーの大人っぽい雰囲気と見事にマッチしていて、見惚れてしまうようだった。 私は自分が注文したモスコミュールの入ったグラスへと視線を落とした。テーブルに等間隔で置かれているキャンドルグラスの火がユラユラと揺れ、それが飲み物にも反射してキラキラ輝いているように見える。そんな幻想的な雰囲気が夢心地にさせ、気付くと私は口を開いていた。 私には3つ上の姉がいる。 姉は昔から気立てもよく、美人で頭も良い。そんな姉の周りにはいつも人がいた。 私はそんな姉といつも比べられていた。 「お姉さんならきっとこうしていただろう」 「あなたもお姉さんを見習ってもっと頑張りなさい」 小さい頃からそんなことを言われて育っていたので、私にとって姉は憧れで尊敬する人だった。 しかし大きくなるにつれ、姉と比べられるのが嫌になってきた。 そう思うきっかけとなったのは、中学生の頃。初めて好きになった先輩が姉を好きなことを知った。最初は仕方ないと思っていたが、姉に近付くために私を利用しようとしていたことを後から知った。 それ以外にも、付き合い始めた男性が姉のことを知ると「お姉さんに惚れた」と別れを告げられたこともある。     
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