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私は小さく深呼吸をし、電話越しの海斗に向かって言葉を届けた。
「…私も…、好きだったよ、海斗」
今まで何度も言いかけて飲み込んでいた言葉。
最後にやっと伝えられた。
一言では言い表せられないけれど、それでも私は目一杯の想いを込めて言葉にした。
「…さようなら」
最後は私からお別れの言葉を告げると、そのまま通話を終了させた。
力なく降りた腕から携帯がスルリと床に落ち、カシャンという音を立てる。
そして、私もそのまま崩れ落ちるかのように床に座り込んだ。
部屋には電気が付いていないが、部屋の正面にある大きな窓から月の光が入り、部屋の中を照らしている。
ここは、海斗と一緒に来ていたホテル。海斗の温もりを感じた場所。
そんな思い入れのある場所で、今私は海斗との関係を終わらせた。
「…海斗」
力なく呟いた言葉は、誰もいない部屋に響くだけだった。
それがとても悲しくて、辛くて、気付いたら私の頬を次々と涙が濡らし、大人げなく声に出して泣いていた。
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