第4章 月下美人

11/17
前へ
/75ページ
次へ
私は小さく深呼吸をし、電話越しの海斗に向かって言葉を届けた。 「…私も…、好きだったよ、海斗」 今まで何度も言いかけて飲み込んでいた言葉。 最後にやっと伝えられた。 一言では言い表せられないけれど、それでも私は目一杯の想いを込めて言葉にした。 「…さようなら」 最後は私からお別れの言葉を告げると、そのまま通話を終了させた。 力なく降りた腕から携帯がスルリと床に落ち、カシャンという音を立てる。 そして、私もそのまま崩れ落ちるかのように床に座り込んだ。 部屋には電気が付いていないが、部屋の正面にある大きな窓から月の光が入り、部屋の中を照らしている。 ここは、海斗と一緒に来ていたホテル。海斗の温もりを感じた場所。 そんな思い入れのある場所で、今私は海斗との関係を終わらせた。 「…海斗」 力なく呟いた言葉は、誰もいない部屋に響くだけだった。 それがとても悲しくて、辛くて、気付いたら私の頬を次々と涙が濡らし、大人げなく声に出して泣いていた。     
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加