第4章 月下美人

12/17
前へ
/75ページ
次へ
その後、私は仕事の引継ぎや引っ越しの準備などに追われていた。そのお陰で余計な事を考えなくて済んでいるので、正直有り難かった。 海斗は他の店舗での仕事に行っているため、話すことは疎か、顔を見る事もできていない。 だが、これで良かったのかもしれない。 会ったところで、今は普通に話せる自信が無かったから。 もう少し時間が経てばきっと、ただの家族として、仕事仲間として接する事ができるようになると思う。 それまでは、会わない方が良いのかもしれない。 そしてあっという間に私の沖縄へ出発する日がやってきた。 飛行機の出発までまだ時間があるため、私は空港のロビーにある椅子に腰かけた。 その直後、携帯が振動していることに気付き、私は携帯を取り出す。どうやら後輩からのメールのようだった。 私は携帯を操作してメールの中身を確認してみると、昨日開催してくれた私の送別会の時の写真をたくさん送ってくれていた。 昨日の事なのに既に懐かしい気持ちになってその写真を眺めていると、1枚の写真で目が止まった。それはみんなが用意してくれた色とりどりの花が飾られているブリザーブドフラワーが写っている写真。今日出発だから生花では持っていくのが大変だろうと気を利かしてくれて、ブリザーブドフラワーを用意してくれたのだ。 私はその写真を見ながら、ふとある事を思い出した。     
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加