37人が本棚に入れています
本棚に追加
“…月下美人”
海斗と再会した時に言われた花の名前。
今の今まですっかり忘れていた。
(そういえば、月下美人ってどういう花なんだろう)
少し疑問に思った私は、そのまま携帯で月下美人を調べてみた。
月下美人。
白く、美しい小さな花。
一晩しか咲かない花で、濃厚な香りが特徴。
花言葉は…。
「…はかない恋」
それを見た瞬間、私は自嘲にも似た乾いた笑みを零した。
海斗の言った通り、確かに私達は月下美人のようだ。
一時だけ恋という花を咲かせ、その濃厚な香りに酔いしれる。
そして、最後は儚く散っていく。
「本当に…もう会えないんだ…」
このまま出発してしまったら、きっと二度と会えない。
それを覚悟の上で海斗に別れを告げたのに、ここ来てとてつもない物悲しさが私の心を支配していった。
海斗に会いたい。
声が聞きたい。
その温もりに触れたい。
次第に熱くなる目頭を静めるため、私は顔を俯けたまま小さく息を吐いた。
最初のコメントを投稿しよう!