第4章 月下美人

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“…月下美人” 海斗と再会した時に言われた花の名前。 今の今まですっかり忘れていた。 (そういえば、月下美人ってどういう花なんだろう) 少し疑問に思った私は、そのまま携帯で月下美人を調べてみた。 月下美人。 白く、美しい小さな花。 一晩しか咲かない花で、濃厚な香りが特徴。 花言葉は…。 「…はかない恋」 それを見た瞬間、私は自嘲にも似た乾いた笑みを零した。 海斗の言った通り、確かに私達は月下美人のようだ。 一時だけ恋という花を咲かせ、その濃厚な香りに酔いしれる。 そして、最後は儚く散っていく。 「本当に…もう会えないんだ…」 このまま出発してしまったら、きっと二度と会えない。 それを覚悟の上で海斗に別れを告げたのに、ここ来てとてつもない物悲しさが私の心を支配していった。 海斗に会いたい。 声が聞きたい。 その温もりに触れたい。 次第に熱くなる目頭を静めるため、私は顔を俯けたまま小さく息を吐いた。
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