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「でもおまえ様は、ほとほと運が良いぞ」
「年の途中で平成の御世が終わるからね」
邪悪な二柱が冷たい声で告げた。
その刹那──
全身の神経を剥がされたような、凄まじい激痛が俺の体を引き裂いた。
街は再び時を取り戻した。
「では平成の者よ、もう逢うこともあるまいぞ」
「あなた様の無私の愛、しかと受け取りましたよ」
空浮かぶ船から大黒天と弁才天が別れを告げる。
その手には、血が滴る肉塊がにぎられていた。
俺は悪態をつきたかったが、口からほとばしる絶叫でそれどころではなかった。
平成の元号は四月末で終わる。
それと同じで、御世おくりも途中で許された。
三分の一の肉体を七福神に剥ぎ取られ、俺の命はかろうじて残っていた。
──御世おくり 終。
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