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〝愛された記憶のない人間は、真実の愛を見逃す。真実の愛を知らないから、ありそうな場所を探すだけ〟
20世紀最高の俳優が言った言葉だ。
やさぐれた俺にはピッタリの心根かもしれない。
それも去年までのことであり、今年にはお払い箱の言葉となった。
真実の愛を見つけたのかって?
そうとも言える。でも形骸化した陳腐なものではない。
見つけたのは愛という言葉じゃなくて、もっとカタチのあるものだった。
「もうすぐ赤ちゃんが生まれるのよ」
女房にそう言われて、むずがゆい気持ちになった。
これが幸せの感触なのだろうか。
肌が粟立つ満足感と、こんな俺でいいのかという不安感が、せわしない心に波状攻撃してくる。
「こんな俺が…こんなに幸せで罰が当たらないかな」
「なに言ってるのショウちゃん。罪は償ったじゃない」
「でも、でもさ……」
それでも言い澱むと、女房が複雑な笑みを浮かべる。
叱りたい半分、慰めたい半分の、時折見せる片笑みだ。
「新しい元号に生まれる子どもですね」
産婦人科の看護師が言った。
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