御世おくり

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ああ、もうすぐ「平成」の元号が終わる。 思えば奇妙なものだ。 昭和に生まれた親父がいて、平成に生まれた俺があり、そして新しい元号の子どもが誕生しようとしている。 その昭和に生まれた親父はもういない。 俺が生まれると同時に亡くなったという。 母もすぐに後を追い、親戚もみんな亡くなった。 俺は天涯孤独で育ったのだ。 生まれの不幸のせいか、当然のごとく不良に成り果てた。心のなかの野獣が幅を利かせていたのだ。 弱い者を殴り殺して、少年院に入ったこともある。人様に言えないような犯罪も犯した。とても罪を償ったとは思えない。 そんな俺だから、人並みの幸せが狂おしいほど怖い。 身の丈に合わない幸福を享受できず、押し入れで膝を抱える少年のように震えていた。 だから生まれようとする子どもには、こんな自分と同じ経験はさせたくない。 まだ早いが、これも親心だろうか。 「こんな家族愛は、俺なんかには勿体ないよ」 「そんなこと言わないで、もうすぐお父さんなんだから」 「うん、わかった。また明日な」 出産日の近い女房に別れを告げ、俺は浮き足立つ足で帰途についた。
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