特別になった日

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 江倉と会うのはその講義の時だけだったけれど、それからはだいたい毎週その講義の後に、講義の内容についてお昼を食べながら話すようになった。  それも前期で終わりだろうと思っていたのだけれど、なんの偶然か後期は哲学関係の講義二つが被っていた。  二月に入り、さすがにすべての講義は終了し春休みに突入している。江倉とは意見交換こそしていたけれど、いまだに連絡先の交換はしていない。  が、春休みに江倉が図書館に毎日のように通っているのは知っていた。暇を持て余しているわたしも似たようなものだからだ。  特に声をかけたことはなかったけれど、今日はバレンタインだ。女子が男子に声をかけるには都合がいい。  幸いお菓子作りは母のおかげで得意なのだ。チョコレート菓子くらいならそう手間はかからなかった。  わたしがチョコをあげたら、江倉はどんな反応をするのだろう?  それも手作りのチョコを、だ。普通の男女なら簡単に答えは浮かぶのだけれど、そこはわたしと江倉だ。普通とか一般とかいうところからは縁遠い。  江倉の反応を楽しんで、ついでに連絡先でも聞いたらもっと面白い反応をしてくれるかもしれない。  そう思うと、包装し終えたチョコを見て、つい笑みがこぼれてしまう。     
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