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彼女は俺の奥さんであった。
こんこんと、こんこんと、白に埋もれていく。
まともな灯りも無いそこは、海の底みたいにしんとしていた。
俺は一度海で死にかけたことがある。
海底を真っ直ぐ見ながら、そのまま両手足は力無く投げ出したまま、ゆらりゆらりと沈んでいった。
力を抜けば浮くとか、学生時代の水泳の時間に言われたと思っていたのに。俺のからだは迷うこと無く海底へと向かっていったのだ。
ああ暗い。暗い方へ、暗い方へと向かっていく。
この話をすると、誰もがその沈んでいく恐怖と孤独、迫り来る死を想像して身震いをした。
ただ実際にはそんなことを思う間もなく、意識が先に離脱した。
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