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だからと言って材料が無くなるわけでもないので、せっかく材料を買ったのだから1人で食べるにしても、板チョコのままより作った方がいいだろうと思い、キッチンへ向かった。
このチョコレートを作って食べたらきっと、この想いも過去のものにできる、そう信じて私は無心になって作った。
それでも彼が好きな少しビターなチョコレートの香りが部屋を充満するにつれて、私の目には涙が浮かんだ。
初めて渡した年は甘すぎるチョコで困らせてしまったとか、去年は彼も逆チョコだとか言ってお互いに食べさせあったなとか、付き合っていた頃は思い出すことも無かった些細な事たちが湯水のように溢れてきた。
それでも作るのを止めることは許されないと自分に言い聞かせて作り続けた。
そして美味しそうにできたチョコレートは食べられる主が決まらないまま、ラッピングされた。
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