世界

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ーーーー 暗闇の中でただ一人、少女は彷徨っていた どうして世界は私を拒絶するのだろう 私は何もしていないのに… 私は一生幸せにはなれないの そんな葛藤に答えるように、暗闇の中に更に深い影が現れ口を開く ーーそう。お前は幸せになどなれやしない ーー化け物が幸せを望むな!! ーー早く人目のつかない場所で死んどくれよ… ーーこの気味の悪い…悪魔め!! 影は様々な人間の姿へと形を変える それは少女の記憶に潜む今までに出会った誰かの姿だ ーーー早く、死ねっ!! やめてっ!!私が何をしたの!? だれか…だれか…っ!! 助けてっ…!! 「…ーーーーナ…」 「ファナ……」 「いや…い…やぁ…っ」 「ファナ!!」 !! 額から大量の汗を流しながらファナは目覚めた ヴィルのベッドを借りた彼女は、防毒服に身を包んだままベッドの中で眠りについていた ふと見ると、ヴィルの手がファナの手を握っていた 「随分うなされていたようだ。悪夢でも見たかな?」 「…うん」 互いに手袋を着けているので伝う筈もないのだが ヴィルの手からは確かなぬくもりが感じられていた 「…直接の接触は出来ないがな」 「…ありがとう」 そう言いながらファナはヴィルに微笑んだ 「ファナ」 「何…?」 「今日は天気がいいな」 「…窓がないからわからない」 「頗るいいんだ。こんな日は外に出た方がいい」 「外に…?」 「うむ。そうだな…そういえばこの丘の海側には良く陽の当たる草原があったな… 行ってみるか」 「えっ!?」 目を輝かせながらファナは返した 「腹拵えをしたら出かけよう。朝食を振る舞う、目が冴えたら降りてきなさい」 「…また魚?」 目を細めながらファナは尋ねた 「…残念ながらパンだ。ご所望なら今から捌くが?」 「パンでいい」 ファナは即答した
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