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彼女はずっと満面の笑みを浮かべていた。もう自由に立っては歩けないけれど。
「ねえ、雪って……」
「どうしたの?」
「本当は、こんなに綺麗なものなのね」
雪の結晶が、彼女に降りかかる。
「そうさ、君の言う、嘘の雪なんかじゃないよ」
「私の見た雪はね……いつもただの……灰だった……」
「どうしたの?」
トマリは、フタバを見た。彼女は目を閉じていた。
「フタバ、どうしたの?」
彼女の車椅子を掴んでいた手が、くたりと落ちた。
「フタバ?」
フタバの体に、雪が積もった。それは正真正銘の雪であった。
悲しい話だ。
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