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葬儀は、当然だが、フタバの故郷で行われた。トマリは、喪服姿で長いトンネルをくぐりながら、彼女の故郷に向かっていた。
彼女が亡くなった後のことは、薄ぼんやりとしか覚えていなかった。ただ、ひたすら泣いたこと。彼女の亡骸が、遠くの地に運ばれていったこと。二人で過ごした部屋が、とても広くなったこと。そしてまた泣いたこと。
トンネルを抜けると、彼女の故郷の街が見えた。この場所は、いつかニュースで見たことがある。フタバは、自分の故郷を明かすことは今までなかった。
嘘の雪が積もる街。
「ほんとうに、ごめんね、ごめんね」
葬儀では、ずっと母親がフタバに謝っていた。
トマリは献花台に花を添えた。これくらいしか、もうできない。
棺に納められた彼女の亡骸は、しかしどこか幸せそうだった。最期に本当の雪を見られたからなのかもしれない。
彼はなんとなく、この場所に来て、意味が分かった。
彼女の言っていた、雪の降る街の意味が。
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