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「お母さん、どうしてこの街は、雪が降るんです?」 「あれは……雪じゃありません」 「この街はかつて、原子力発電所の事故があって、それで……いわゆる死の灰が舞うようになってしまったんです。今だからもうほとんど降ることはないものの、昔はよく降っていて……」 「けれど、私たちはこの場所を捨てきれずに、灰が降ることも知って……ずっと住んでいたんです」 「その後、あの子が生まれたけれど……ずっと放射能と死の灰に晒されてきた……私たちの、この場所を捨てたくないというエゴのためにずっと……」 「だから、あの子には……あの子には何の罪もないんです……」 「ごめんね……本当に、ごめんね……」  フタバの眠る柩に、雪が積もった。それは嘘か真か。  悲しい話であった。  だから、せめて本当の雪であって欲しいのに。 (了)
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