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二回目の冬が終わり、春が雪を溶かした。
トマリが、花粉症で苦しんでいる側で、フタバはとても嬉しそうに、外を駆け巡っている。まるで外に出られた子供のように。
「そんなにはしゃぐと、転んでしまうよ」
「大丈夫、ほら蝶が飛んでいるから」
もう雪解け水もない、街の郊外の高原を、彼女は走り回っていた。
トマリの遠くの方で、彼女はころん、と転がった。
ほら、もうこけているじゃない、とトマリは笑った。
呆れながら笑って、転んだ彼女に近づくと、彼女の手には血がついていた。膝でも擦りむいたのかい、とトマリが言いよると、
フタバの口から、血が少し零れた。
トマリが、フタバを抱えて病院へ飛び込んだ。
フタバはまだ少し咳き込んで、口から血を零していた。
彼女は、診察室に移された。腕から血を抜かれ、色々な検査を受けた。それは数日に及んだ。そして、フタバの両親が病院に呼ばれた。
「申し上げにくいのですが」
開口一番、医者が言った。
「彼女に残された時間は、もうほとんどありません」
彼女は酸素マスクをされて、眠っている。
「彼女の病は、治らないものなのです。それも、彼女には病に打ち勝つだけの体力がないのです」
彼女の血は、もう真っ白なのだという。
「保って、半年です」
医者は、少し辛そうに彼女の運命を告げた。
「ねえ、私の命どうなるのかしら……」
「僕には……わからない」
彼は嘘が下手だった。
「なあ、フタバ。地元に帰って、ご両親と暮らした方がいいよ」
「どうして?」
「君は今、お母さんとお父さんと、一緒にいるべきだ」
「私はね」
フタバは、少し涙ぐみながら、
「あそこに帰りたくないの」
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