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 もう少し、二人の話をしよう。  トマリは、雪の少ないところで生まれた。たまに降っても、牡丹雪はすぐに水となってしまう。幼少期は、雪合戦も、雪だるまを作ったこともなかった。かまくらなんて、なおさら。  本の中の写真、テレビの中、雪が降り積もる景色を見ているのが好きだった。大学生になって引っ越した街は、雪もそれなりに降っていた。彼は雪の夜になると、まるで子供のようにはしゃいだ。幼少期に憧れた風景を、独り占めできたから。  フタバの生まれた街は、トマリの故郷からはるか遠く。それでも、雪が降るような場所ではなかった。夏はかんかんに日が照って、冬は暖かく過ごしやすいような地域だった。積雪とは、無縁のような場所だった。  一度、トマリがフタバに聞いたことがある。 「ねえ、雪が嫌いそうに見えるけど、君の街は雪なんて降らないんじゃないかい?」 「降るよ、ずっと降っていた」 「まさか、あの場所で雪なんて」 「嘘の雪が、ね」  フタバは、この世のものとは思えないほどの悲しい顔をした。 「ずっと、降っていたのよ」
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