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二人は冬の頃、一度だけ喧嘩をしたことがある。
一度、トマリが強引に、雪の日にフタバを外に連れ出そうとした。フタバは涙目になりながら抵抗し、
「そんなに外に出したいなら、出て行ってあげる!」
ドアを開けっ放しにし、彼女は出て行った。
トマリはしばらく考え込んだあと、外套を来て彼女を探しに外へ出た。
夜の街は、真っ白になっていた。雪は強さを増し、外で遊ぶ子供もいなかった。まずいことになった、これ以上吹雪いたら危険だ。
しかし、幸いなことに、雪が積もってできた白い絨毯が、彼女の足跡をのこしてくれていた。トマリは、それをたどって行った。
フタバの足跡は、家から少し離れた自動販売機の前で途切れていた。販売機の前に、彼女はうずくまって泣いていた。体を丸め、膝を抱えていた。
「フタバ、ごめんね」
彼女は、目を腫らしてトマリを見た。
「本当に、雪が嫌だったんだね」
二人の体には、雪がまとわりついていた。
「トマリ……私、本当に怖かったの……」
「そうだね、うちに帰ろう」
トマリは、もう雪の日にフタバを誘うことはなくなった。
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