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「…やっぱり並んでますね」
「でもせっかくだし、乗りたいです」
観覧車への行列はなかなかの物で、同じようにイルミネーションを見ようと考えるカップルだらけだった。
少々弱気になる彼に七美はハッキリと告げ、行列の最後部に加わる。彼はあ、と小さく声をあげた。
「長そうですし、温かい飲み物買ってきますよ。何がいいですか」
「ココアとか、甘いもので」
了解です!と彼が一端列を離れる。七美は一人になり、久しぶりにスマホを取り出した。この遊園地に来てから、全く見ていない。
バックライトを点灯させた途端、七美の鼓動がドクンとひとつ脈打った。
着信の通知とメッセージアプリの通知、その差出人は――別れたばかりの、彼氏だった。
早鐘のように打つ心臓をなだめ、通知をしばらく見つめる。
約束を反故にしたことへの謝罪か、それとも何か他の用事か。
震える指でメッセージアプリを開こうとし――…また、スマホが着信を知らせた。電話の発信源は、元彼。
七美は思わず泣きそうになった。
クリスマス数日前に振っておいて、当日の約束もなかったことにして。それなのに、今更何を。
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