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何度かの乗り換えを挟み、遊園地の最寄りにつく頃には雪は小降りになっていた。電車を降りると肌を突き刺すような冷気を感じ、七美は小さく身震いをする。
「えっと、南口…?」
先に降り立った彼は慣れていないのかキョロキョロと周りを見回している。七美はこっちです、彼を呼び止め、一緒に改札を抜けた。
「前に来たことがあるんですか?」
「…一回だけ。あ、あそこが入口です」
園内に入ると、イブの夕方にしては空いているように思えた。とはいえ、目につくのはやっぱりカップルの姿だ。
入ってすぐにイルミネーションのアーチができている。アイスブルーの美しい光が二人を出迎えた。
「わー…」
彼は口をぽかんとさせ、しばらくその光に見入っているようだった。瞳にキラキラとイルミネーションが反射し、七美は純粋にそれを綺麗だと思う。
「まだここは前哨戦ですよ。中に行きましょう」
七美はなかなか動かない彼をうながし、二人でアーチをくぐった。横に並ぶと、彼の背の高さが目に留まる。
「背が高いと、このイルミネーションが近くで見えていいですね」
なんとはなしに七美が呟く。すると彼は少しぽかんとした後で、クスクスと笑い出した。
「考えたこともなかった」
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