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実際には、まだ出会って一時間ちょっとしか経っていない。そもそも相手の名前も、素性も知らない。 でも。 今隣で見ている景色の美しさは本物だ。 そっと白い息を吐く。いつのまにか雪は止んでいて、その代わり一層濃くなった夜の闇に消えて行く。 「あ…ごめんなさい、見とれてました」 ふいに彼が声をかけてきて、七美は再度向き直った。 「大丈夫ですよ。…本当に、綺麗ですよね」 「なんだか、不思議な感じです」 彼の言葉に七美は首を傾げた。 「クリスマスって、今まであまり気にしたことなくて。…こんなに綺麗だったんですね」 そう言う彼の目線はイルミネーションの遥か遠くを見ているようで、七美は戸惑った。 彼の目には、どんな景色が見えているのだろう。 「そうだ、お腹空きませんか」 突然彼が話題を変えた。 「じゃあ、フードコートがそばにあるので行きましょう」 七美がそう言うと、また雪がちらつき始めた。 並んで歩きながら、イルミネーションと雪のコラボを楽しむ。雪が、小さくてどこか懐かしいアトラクションに積もっていく様はまるで… 「スノードームみたいですね」 「スノードーム?」 何気なく七美が呟くと、彼は目をぱちくりとさせた。 「知らないですか?」     
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