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「やっぱりクリスマスはチキンですかね?」
「おお!クリスマスにチキンも憧れてたんですよ」
「でもこのピザもおいしそう…」
「いっそ両方食べましょう」
とりあえず席を確保し、二人でああでもないこうでもないと言いながら店を選ぶ。ガヤガヤとした喧騒が却って七美には心地よかった。
「「いただきます」」
彼がチキンにかぶりつく。七美はその様子を見て微笑むと、自分も星形にくりぬいた野菜の乗るピザを頬張った。
あまりにも自然に二人で食事をしていて、七美は不思議な気持ちになる。
「…なんだろう、クリスマスだからかな」
「なにがですか?」
彼の言葉に、七美はどきりとして聞き返した。一瞬、考えを読まれたのかと思った。
「普通のチキンなのにおいしく感じるんですよ」
『うまいなー二人で食べるからかな』
…まただ。彼の言葉に、異なる声が重なる。
「…こういう遊園地とかで食べると、妙においしく感じたりしますよね」
七美は目をそらしてそう言うのが精一杯だった。微かに震えそうになる手を、そっと膝の上に置く。
「ひとつ聞いていいですか」
急に彼の固い声が響き、七美は弾かれたように顔を上げた。
「…今日、誰と来る予定だったんですか」
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