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始まりの日
10月15日。
暑い日差しもだいぶなりをひそめ、秋らしいカラッとした日が続く今日この頃。私は、自宅の7階のマンションの自室で目を覚ました。
「…んっ…」
開けっ放しにしたままにしてしまっていた窓の外から、小鳥のさえずる音が聞こえる。窓から入ってくる日差しも眩しい。どうやら、今日もいい天気なようだ。
窓から入ってくる太陽の光の眩しさに目を細めていると、パンの焼けるいい匂いと、コーヒーのほろ苦い香りが、キッチンの方から漂ってきた。一人暮らしをしているマンション。当然、いるとすれば、家族の誰かだ。母さんでも、来ているんだろうか?と未だはっきりしない頭で考えてみる。うつぶせになって寝ていたせいで、少々苦しい。
仰向けになり、ぼんやりと天井を見上げれば、次第も視野がはっきりとしてきた。
「ふ~…」
大きく息を吐いて、ベットを出ようと体を起こす。ぐぐーと、体を伸ばす。
時計の針を見れば、すでに、10時52分を指して、もうほぼ11時だ。
「…やばい」
肩まで伸びた髪を上に掻き揚げて思わず独り言ちる。母が来ているとなれば、この時間で起きていない時点で、小言の一つや二つ言われる。
「はぁ…」
覚悟を決めて、とりあえずは、パジャマを脱がなければ。いつまで、その恰好でいるのだとまた小言が増えてしまう。とりあえず、クローゼットを開いて、秋らしいオレンジのニットと白いパンツに履き替えた。申し訳程度に、髪をとかす。化粧は、いいだろう。母だし。
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