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ちょっと待て、いったん、整理しよう。
今は…、11時23分。なるほど、道理でおなかがすいた…じゃなくて!
朝、目が覚めて、いい匂いがするな~なんて思いながら、着替えたわけで…。その原因は、母だろうと思って、遅い起床に、苦言の一つや二つあること覚悟して、リビングに足を踏み入れた。けれども、そこにいたのは、甘栗色の髪と碧眼の青年で…。一瞬、泥棒かと思ったけれど、私を見て、驚くこともなければ、当たり前のように、おはようと来た。そもそも、泥棒に入った家で、料理をする泥棒がどこにいる?あれ?もしかして、昨日、私が、招き入れちゃった?え?どういうこと?いや、ちょっと、よくわからなくなってきた。
「あ、もしかして、敬語の方がよかった?」
「いや、そうじゃなくて…」
「俺、敬語苦手なんだよね…じゃなかった…。苦手なんですよね…」
正直、頭の中がパンクしそうなのだが…。
「敬語は、いい」
「え!?いいの!?」
言えたのは、そんなこと。なんだろう。尻尾が見えるような気がする。
「うん、見たところ同い年くらいだろうし…」
ちょっと、冷静になってきた。とりあえず、わかったのは、彼は、私に危害を加える気はないことは、わかった。
「同い年…か。俺、たぶん、マスターより、100年以上長く存在しているよ」
「え…?」
一瞬、冷静になったにもつかの間、彼は、また謎を増やしてきた。
困ったように笑う彼は、どう考えても100年も生きているように見えない。
「それは、どういう…」
私を見つめる澄んだブルートパーズの瞳を見て、ふと思い出す。柔らかそうな亜麻色の髪。空色の瞳。
見たことあるはずだ…。だって、私は、昨日、“ソレ”を手に取って、持ち帰ったのだから。
「よかった…、思い出してもらえたみたいだね…」
「え…、でも、どうして…」
私の様子を見て、安堵したように笑う。
「だって、俺は、“同居ドール”だからね」
これは、毎日なんとなく日々を送り、目標もなければ、目的もない。会社を辞めてから半年、生きがいもなく、ただ無感動に過ごしていた頃、思いがけず起こった奇跡のような日々を綴った私の物語。
つまりは、私と同居ドールの“彼”との日々を綴った物語だ。
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