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「…はぁ、美味しかった」
お腹が満たされて、思わずお腹をさする。当初の予定では、マカロニグラタンとコーヒーだけだったが、メニュー表を眺めていて我慢できずに、ガトーショコラを頼んでしまった。量が多いかなと思ったけれど、何のことはない。美味しくて、あっという間に平らげてしまった。
「食後に一杯どうですか?こちらはサービスです」
「え…?でも…」
「美味しく食べてもらえたみたいですから」
私が、平らげた空になった皿をちらりと見て、軽くウインク。様になっているところがすごい。せっかくの好意なので、ありがたく受け取ることにする。
氷の入ったグラスから香るのは、コーヒーの香りだ。テーブルの上に置かれたびんから、角砂糖を1つ摘まみだして、中に入れて、かき混ぜる。
「…美味しい」
ほろ苦さと甘さが口の中に広がっていく。
「お嬢さんは、本当に美味しそうに食べますね」
「ここのものが美味しいんですよ」
「ありがとうございます」
始終、この人は笑っている印象だ。だから、つい口に出してしまった。
「この仕事が大好きなんですね」
「はい」
私の突然の問いに彼は一層目を細めて即答。それだけでわかった。この仕事に誇りを持っているんだと。仕事に誇り…?あの頃の私は…。
『これ、やっといて』
『え?この仕事、私したことないのですが、教えていただ…』
『じゃあ、自分で考えてやれば?忙しいの。いちいち、聞かないで』
『なんで、勝手にやったの?』
『…申し訳ありません』
『本当、使えない!!』
毎日、地獄のような日々を送っていた。
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