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世界
「もうすぐ平成も終わりですね、新しい元号は…」
適当につけたテレビはちょうど朝のニュース番組をやっているところだったようで、着飾ったお姉さんとスーツのお兄さんとが写っている。
いやいや、お姉さんとお兄さんと思ったが、案外、歳は変わらないかもしれない。
私は自嘲気味に鏡の中の自分に笑いかけた。
目の下についた隈はもうとれないだろうし、赤くて丸かった頬はしゅっとしている。
まあ、この方が大人らしい顔つきなんでしょうけど。
鏡の前に並べた化粧品を一つ一つ顔に塗りたくっていく。
「ああ、めんどくさい。」
大人ってこういうもんじゃないと思ってた、なんて思いつつ今日も適当に仕上げていく。
まだ、適当で済まされている分、学生という身分であって良かったと思う。
服はセーターにロングスカート、ブーツ。
筆記具にノート、講義で使うプリントをリュックに詰め込んで玄関へと急ぐ。
しかしまあ、自分が生きている間に元号が変わるなんて思いもよらなかった。
いや、いつか変わるときがくる、というのは何となく理解していたものの、こんなに早いとは思ってもみなかったのだ。
「まだ、大人って自覚すらないのになあ。」
溜め息と一緒に本音まで漏れて、また自嘲気味に笑う。
一体何をしたら大人になれるやら。
平成の次の新しい元号の後輩でもできたら、大人の自覚を持てるんでしょうかね。
いや、それはないな、と頭を振って玄関ドアを開いた。
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