4話 羨望《前半》

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酷く興奮すると人は一時的に痛みを感じなくなると、今はその通りと言うしかない。 あの時とは違い、今なんて少し動かすだけで腹を上から押さえつけられる痛みが走り、その痛みで俺は覚醒した。 何故こんな怪我をしたのか、経緯を思い出しながら暗闇の中で目を開ける。 部屋は真っ暗で昼は遠に過ぎて夜、そうだ俺は、男に散々振り回された後にそいつの首を締めた。その時意識が朦朧としていた為、男が泡を吹いてどうだったか興奮してほぼ記憶がない。 最後に見たのはあお色? とりあえず、身体を起こそうとベッドに手をつくと俺は気がついた。 いつもよりかフカフカと布団が柔らかく、弾力がいい。何よりも、あらゆる所から知らない香りが漂っている。砂糖のような甘い香り、けれどスッキリとしたミントのような匂いもする。 暗闇で見えてないが明らかに知らない部屋に俺はいる。病院でもなければ自分の部屋でもない訳がわからない状況。 そうだ、携帯か何か無いかと思い辺りを探るが布団の感触しかしない。いったい何処までがベッドなのか、地平線まであるのではないかと勘違いするほど広い。 状況も状況で、混乱していた俺はベッドの端が分からず空を掴んだ瞬間、ベッドから落ちた。 こんなにも綺麗にベッドから落ちるなんて小学生以来だ。 「いってて。」 結構な高さから落ちたが床が絨毯だったため、怪我は無く身体を少し打ったぐらい。 「本当にどこだよ、ここは。」 暗闇に目が慣れてきて、どんどん部屋の全貌が見えてくる。 夜空が一望できる大きな窓は開き、風で揺れる刺繍のカーテン。振り返れば、何サイズか分からないデカいベッド。 何よりも現代の普通の一般家庭の部屋ではない、いつかの教科書で見たような洋館風の広い一室。 タイムスリップしたのか、寝ぼけた事を思うほど周りは見たことない物で溢れていた。 それとも頭ぶつけておかしくなったのか、説明できない状況は置いといて俺は起き上がる。 「うわっ!」 立ち上がった瞬間、次は床では無く高い天井が目に映り、俺は何かに引かれてベッドに逆戻りした。 「うるせぇ。」 「って……みかど。」 美男淡麗美丈夫の言葉を兼ね備えた人間、そして最後に見たのは蒼い眼。 見たのはブルーもブルーで知っている蒼色、記憶が蘇ると共に俺の頭の血が真っ青になっていく。 思い出した、この人に止められて……吐いた。 そうしたら、連行された。 「最悪だ。」 「人の顔を見て、最初の言葉がそれか。弟切?」 不機嫌そうな顔が覗く。何処にも行けないように腰に大きな手を回され、お互いの足が重なり密着する。 「本当にすいません、この恩は何かでお返しますので勘弁してください。」 「だったら今返せ。」 「じゃあ、コンビニぐらいは走るのでまずは離してもらえますか。」 引き剥がそうともがく俺をいっそう、帝は強く抱きしめた。 「先輩っ!一応怪我してるので緩めろ。第一ここどこなんですか。」 「もう、寝ろ。うるさいのは朝になってからにしろ。そしたら色々話してやるよ。」 「今、聞いてるんです。こんな状態で寝ろなんて無理ですよ!」 「……。」 「てか何で、上半身裸なんですか。下履いてますよね?お願いですから冗談は顔と部屋だけにしてくださいよ。」 「……。」 下は覗きたくない、裸で男に抱かれてるなんて事実を認めたくはない。 さっさとここから抜け出したい俺は腹の痛さも顧みず手に力を込めた。 すると、帝が息遣いが分かるほど近づいてきては耳元でそっと呟いた。 「犯すぞ。」 その一言で全ての力を抜いた。決して今動くべきではないと悟り、朝まで待とう、素直に俺は従った。
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