4話 羨望《前半》

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「弟切、そこまでにしておけ。いい加減にしないとソイツが死ぬ。」 俺を呼ぶ声がする。振り向くと暗い細い道に何十人もの男が立っていた。 3人?いや4人、2人いるのか。何人いるのかも分からないほど影が重なり暗闇が増す。 そして、じっくりと見れば同じ顔の人間が何人もいて、数は少なくなったり多くなったりしていた。 「おい、大丈夫か?目が随分とうつろだな。」 その中で蒼眼の男がそう言って、下で失神している男から俺をずるずると引き剥がした。 俺を無理矢理引き剥がした青眼の男に一言言ってやろうと文句を飛ばすが、男は怒りも苦言もなにも反応しない。あの汚い男の仲間だと思っていたが俺を見下げてはただじっと見ているだけ。 「聞こえてるか?ダメだ、反応がないし聞こえてもないな。」 「ーーーさん、すいません。予定入ってるのに急に来てもらって。」 「別に構わない。コイツが人殺すよか予定を破るぐらいは些細な事だ。」 俺を抱える男は急に話し出したと思えば、途切れ途切れで何かを話す。言葉の端と端をどう繋げても言葉にならず、何が言いたいのかさっぱり分からない。 理解不能で意味不明な蒼眼に手を伸ばし頬をつねる。いいから離せと抗議してみる。 「痛いからやめろ。お前は誰にやってるか、わかってるのか?……俺が誰かもわからないほどか。」 「あの、本当にすいません。起きたら殴っていいので。」 「嗚呼、そうさせてもらう。」 引っ張った頬のせいで淡麗な顔が横に伸びた変な顔になって面白い。 蒼眼はやめろと手を払う、怒っているけど優しい声……あれ? この感じはまさかと頭を巡らせたが、今頃になって打ち付けた頭がガンガンと鳴り響き痛みがどんどんと広がっていく。広がりは内臓まで達して全身を棒で掻き回されたような痛み変わる。 胸が苦しくなって気持ち悪くなる。 「ちょっと弟切!それはダメだって。」 「……。」 「あーー!」 明人が大声で叫ぶ。 腹を蹴られた際に打ちどころが悪かったと言うしかない。 「昨日と今日とお前は散々だな。」 目を細めると、そこら辺できっと買えない綺麗な服で俺の汚れた口元を拭く。 昨日と今日の散々な事は貴方のせいだ。 口元を拭き終わると汚れた服を気にせず彼はまともに立つ事すら出来ない俺を優しく抱え直した。 「気を失う前に言っておく。お前を今から家に連れていく、ちゃんと医者にも見せる。 分かったか。」 耳元で必ず伝わるようにはっきりと喋る。 3人も4人もいない、ただ1人が俺を支えて話してくれている。今度は伝わりましたと、やっと声が出始めた俺は頷いて。 「嫌です。」 「生意気に言うな。拒否権は無いに決まってるだろ。」 白黒の画面の彼は笑顔だった。
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