4話 羨望《前半》

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部屋の中だというのに大きな窓のおかげで広がる青い空が堪能できる。そして朝日の光が俺の目を突き刺した。結局、一睡も出来なかった。 というか出来る訳がない、他人の匂い、他人の家で、しかも猛獣でヨダレを垂らす野生のライオンの横で誰が寝れる。 言おう、誰も寝ることは出来ない。永遠の眠りは出来るかもしれないが。 隣にいるライオンさんは当然自分の匂いがついた棲み家、それはそれは、呑気に寝息たててぐっすりと寝ている。 殺してやろうかと、思いつつ腕から解放された俺は隈を擦り起き上がる。 やはり、寝ても覚めても煌びやか部屋の様子は変わらず、机も椅子も全ての物が細かく装飾されていた。明らかに本人の趣味ではないだろうと思われる高そうな骨董品が綺麗に飾られている。 棚に置いてある美品を見ながら部屋を歩き回るが、決して手にとったりはしない。下手してビビなんて入れたら、のちのち後が恐いから。 部屋から出たい気持ちはあったが、何せこの広い一室でとどまらず、この家から出る自信はなかった。 先程、窓の外を眺めたが森だった。もう一度言おう庭ではない森だ。確実に迷える自信しかない。もう一つ、服装が寝巻きだったのも理由だが。 兎に角、アレが起きるまで待つしかない俺は大人しく美術館のような部屋を観察をする。 高校男児特有の雑誌とか有れば面白いのに、という期待も込めながら。 雑誌ではなかったがある物が目に止まる。 これ、もしかして。 触らないと決めた筈の俺は思わず、棚に置いてあった『それ』だけを手に取る。全て美術品のような中に一つだけそぐわない物『それ』は大事に置いてあった。 ボロボロで薄汚れた『それ』は耳なんかちぎれて、ボタンの目は取れかけで宙に浮いていた。手触りの良かった毛先はもうクルクル巻いてゴワゴワとした違和感のある手触り、けれど埃を被らず綺麗に保存されていた。 まだ、あったんだ。クマのぬいぐるみ まだあの昔に感情が残っているという証なのだろうか。思い出したくもない過去の残骸に不思議と胸がキシリと痛む。 「懐かしいか。」 「うわっ!」 いつのまにか後ろに居た帝に抱きつかれていた。 「起きたなら、挨拶ぐらいしてくださいよ。」 「おはよう。」 「そうではなく。寝ぼけてますね。」 「寝ぼけてない。」 そう言いつつ、俺の肩に眠たそうに頭を置く。薄茶色の髪が鼻に当たってこしょばい。 「なんでどっか行くんだ?起きたら居ないからしんぱい。」 「先輩?」 「もう、ぬいぐるみなんかいい。」 「あの〜。」 揺すっても反応がない。無言、そして動かない、この人立ったまま寝てるよ。 「せ〜ん〜ぱ〜い。」 優しく甘えるように猫撫で声で先輩を呼ぶ。時計が午後に変わる前に是非ここは起きてもらうために、ガラ空きの腹に俺は肘を入れた。 当然、呻き声と一緒に蹴りが飛んできた。
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