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「さあ、1本づつどうぞ。」
青年マジシャンはそう言うと、左端から順番にマッチを配りだした。右端の女性に配る時に、わざと手に触れ3秒程目を見つめた。
これは、青年マジシャンがナンパする時の常套手段なのである。
右端の女性が、少し照れた様子でミディアムヘアの髪の毛を耳にかける。
脈ありだな、と青年マジシャンは思った。
「この魔法のマッチは、魔法が使える素質のある方のみに反応するマッチなのです。さぁ、この中で魔法使いの素質がある方はどなたでしょう?せーのでにフッと、息を吹きかけてみて下さい。では、いきますよ。せーのっ!」
5人の女性達は青年マジシャンに言われた通り、一斉にマッチに息を吹き掛けた。
すると、右端の女性のマッチだけが燃え上がった。
「わぁっ!スゴーい!」
拍手喝采が起こる。
右端の女性は信じられないと言った感じの顔で、何度も青年マジシャンに視線を送った。
「貴女には眠っている才能があります。もし、魔法に興味があれば、いつでも僕にお電話下さい。」
そう言って、青年マジシャンは名刺を出した。
右端の女性が名刺を受け取ろうと、少しはにかんだ笑顔で立ち上がる。
青年マジシャンは女性に近寄るため、カウンターに身体を乗り出した。それから、名刺を渡すと同時にその女性だけが聞こえるようにそっと囁いた。
「魔法じゃなく僕に興味があっての電話も、もちろん大歓迎ですからね。」
真っ赤になった女性の顔を見る限り、青年マジシャンは彼女のハートに火をつける事にも成功したようだった。
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