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深夜2時過ぎ。
青年マジシャンは薄暗い部屋で目を開けた。
それから、まるで何かに引っ張られるようにむくっと起き上がり、足をベッドの外へ投げ出した。
呆けた顔で抜け出たベッドには、ミディアムヘアの女性が下着姿で寝ている。
青年マジシャンが職場のマジックバーでナンパした地味美人だ。
青年マジシャンはその女性を尻目に、丁寧に畳まれた自分の服に手を伸ばした。
寝ぼけた様子で服を着ると、そのまま玄関の方へ向かって歩いて行った。
途中、ローテーブルの脚に足の小指をぶつけてしまったのだが、青年マジシャンは何の反応も見せずに歩み続けた。
テーブルの上の花瓶やキャンドルが落ちるほど、勢い良くぶつけたというのに。
そのまま真っ直ぐ玄関ホールへ向かい、靴を履くと、振り返ることなく玄関ドアを開けた。
マンションの一室から外へ出て行く青年マジシャンの目は虚ろで、まるで夢遊病者の様にもみえたのだった。
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