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  「もう、すぐ近くよ!」 蛯名千里の左手薬指から垂れ下がった水晶の振り子が勢いよく回っている。 「如華ちん!捕獲の準備を!」 「いつでもOKだぜ?ボス。」 有馬如華は輪っかになった麻縄を、カウボーイさながら頭上でぶんぶん振り回していた。 某河川敷で20代の若い女性2人が真剣な眼差しで、草葉の陰に集中している。 2人は余りにも場違いな格好で、よく、目立っていた。 ペンデュラムを持った方は、黒いロングヘアで、胸の部分が大きく開かれた黒いワンピース姿。 縄を持った方は、サイドを刈り上げトップを緑色に染めた髪の毛に、ピアスだらけの顔、タンクトップにホットパンツ姿といった感じなのだ。 土手を散歩する老人や、ランニング中の若者の目に止まらないわけがなかった。 「そこよ!その草むらにいるわ!」 千里が指差す生い茂った葦の向こうから、フガッフガッと、何か動物らしき物音が聞こえる。 それと同時に薄ピンクの生き物が、2人に向かって飛び出してきた。 それは、子犬ほどの大きさの豚だった。ペット用に改良されたミニブタである。 「如華ちん!」 「任せろ!」 如華の放ったロープの輪っかが、ミニブタ目がけて飛んでいく。 ところがミニブタは、俊敏な動きで輪くぐりさながらスルリと飛び越えると、右へ90度方向転換した。 しかし、ロープはまるで追尾ロケットの様にミニブタを追いかけ続ける。 そして、遂には後ろ足に絡みついたのだった。 「ピギーッ!」 驚いたミニブタが悲鳴を上げる。 尚もロープの動きは止まらず、まるで生き物の様にスルスルとミニブタの全身を這い回りだした。 そして、瞬く間にミニブタを縛り上げ、微動だに出来なくしてしまった。 「この雌豚が!」 如華が勝ち誇った態度でミニブタを見下した。 「如華ちん、亀甲縛りはやり過ぎよ。」 千里がキャリーケージを運んでくる。 「ん?だったらチャーシューのタコ糸縛りがよかったか?」 「もう、ジョーダンきつ過ぎ。」
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