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「確かに、俺がいまここにいるのは、任務のためだ。その任務とは、愁が開発した殺人ウィルスの解毒剤を回収すること。何故解毒剤を回収しなければならないのか。……それは愁にとって信じられないような話だと思うし、知ったことを後悔するほどのつらいものかも知れない。だから、落ち着いて聞いて欲しい」
晃生の真剣な眼差しに、僕は覚悟を決めて深く頷いた。
「愁が俺の通う高校に転校してきたあの日、俺は愁に一目惚れした。って話は昨夜したよな。その日のうちに俺は、忘れ物を届けるという名目で担任教師から愁の自宅の住所と電話番号を聞き出し、その情報を元に愁のコンピューターに侵入した」
「……それってストーカー、いや、完全に犯罪じゃ……」
「好きになった相手のことは、すべてを知り尽くしたい主義なんだ」
そんなの当たり前だろ、と全然悪びれた様子もなく、晃生は話を続ける。
「そこで、父親の遺したデータを発見した。俺は自分が孤児だってことは知っていたけど、父親の正体や愁のことは初めて知ったんだ」
「……ショックだった?」
僕の問いに、いや、と晃生は首を横に振った。
「驚いたけど、嬉しいっていう気持ちの方が大きかった。だって、本当の兄弟なら、俺と愁とは永遠に繋がっていられるって思えたから」
「……」
「でも、俺が何よりも嬉しかったのは、愁が勇気を振り絞って俺に会いに来てくれたことなんだけどね」
そう言って、溶けそうに甘やかな視線で僕を見つめてくるから、僕は頬を染めたまま、晃生の瞳に吸い込まれるように見入っていた。
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