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 晃生がいない高校に、もはや通う理由などなかった。僕はその日のうちに退学届を提出して、自宅の研究室へと籠り、人類史上最強の化学兵器開発に専念する以前の生活へと戻ったのだった。  そして月日はさらに流れ、僕は極悪テロリスト集団のオーナー、ドクタートヨタとして、世界中にその名を轟かせていた。ちなみに僕の姓は豊田ではないが、「世界で最も有名な日本人の名字だからみんなに覚えてもらいやすいかも」と思い、そう名乗ることに決めたのだ。  これまで無数の陰謀を企ててきたが、あと少しのところでひとりの国際諜報員に阻止され続けてきた。彼のコードネームはDB5。僕の永遠の宿敵だ。  しかし、それももう終わりだ。僕は長年の研究の末、わずか一週間で全人類を死に至らしめる恐怖の殺人ウィルスとその解毒剤の開発に成功したのだ。これで世界は僕にひれ伏したも同然。地球全土を征服する日が、まもなく訪れるのだ。 「ふふっ」  想像しただけで、笑いが止まらなかった。そうして散々笑った後、僕はあることにふと気づいた。  もしこの殺人兵器を使用すれば、晃生も死んでしまう。  瞬く間に全身の血がざっと引き、僕の顔は蒼白となった。それだけは、なんとしても阻止したい。晃生が今どこで何をしているのか分からないが、直ちに見つけて隔離しなければ。  そう思い立って、コンピューターを起動した僕は、液晶画面を見つめて息を飲んだ。
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