ゾンビになった彼と不甲斐ない僕

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 先々週の金曜日のことだ。放課後の教室で僕はこいつとダベっていた。いつも前の晩に観たテレビの話だとか、毎週楽しみにしている漫画の話なんかで盛り上がるのだけれど、その日は最近彼女ができた友達の話をしていた。彼女ができたというそいつも普段は一緒にダベっているのに、放課後デートに行ってしまってその場にいなかったのだ。  だから、教室には僕と彼の二人だった。 「ああー、彼女かあ。すごいよなあ」  高校生で彼女ができるなんて漫画の中だけの話だと思っていた僕は、どんどんカップルができていく周りの状況を気味悪く思いつつも羨ましく思っていた。  彼女ができるだけでつまらない繰り返しの毎日が充実するんじゃないかとか、周りの同級生とは違う何か特別なものになれるんじゃないかだとか、そんなことを無意識に考えてたんだと思う。  僕たちとの無駄話よりも彼女を選んだ友達を恨めしく思いながら机に突っ伏して唸っていると、隣に座っていた彼はブラックサンダーをボリボリ頬張りながら僕の顔を覗き込んだ。 「彼女欲しいっていうけどさ、好きな子いるの?」 「好きな子?」 僕は眉をひそめる。 その時になってやっと僕は気がついた。     
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