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窓から入る西日に照らされて、閉じた瞼の裏の血管が見える。
鼻先を桜の香りがくすぐって、僕は苦しいほどの懐かしさを抱いた。
「ほら、早く選んで。どっちがいい?」
「え?」
懐かしい声がして、僕は閉じていた瞼を開く。目の前には目をあけた僕をキョトンと見つめる彼がいた。
彼は恨めしそうな顔をして僕のおでこにデコピンする。
「こら。目は閉じたままだって」
「へ?」
何が起こっているのかわからない僕は小首をかしげた。すると彼も同じように首をかしげた。
「どうしたんだよ? キスの練習するだろ?」
「あ……ああ、そうだったよな。でも、マシュマロで練習するなら、目を瞑る必要なくない?」
僕の問いかけに彼は興が冷めたような顔をしてツンとそっぽを向く。
「それはさっきも答えたじゃん。ジュンはキスする時に目を瞑るだろ? だから、その時と同じ状態を作ろうとしてるんだよ」
「うん、そうだったな」
そうだそうだ。彼がマシュマロを使って相手役をやってくれるから、僕は目を閉じて待ってるだけでいいんだった。
「ごめん。ぼーっとしてた」
僕は急いで目を閉じる。視界を遮ると、桜の香りが強くなった気がする。
「で? レモンか桜か決まったか?」
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