18人が本棚に入れています
本棚に追加
彼は真面目にそう返すと、ブラックサンダーの袋を手の中でクシャクシャと丸めてブレザーのポケットに突っ込み、僕の顔をまじまじと眺める。
「じゃあさ、ジュンはどんな子が好きなの?」
その口調はまるで取り調べをする警察官のようだ。
「どんな子って?」
「ほら、どんな顔の子が好きとか、短い髪型が好きとか、あるだろう?」
僕はもう一度脳内の女の子たちを掘り起こす。
どの子も顔がわからない。
髪型は……長い子も短い子もいた。
「好きなアイドルとか、女優は?」
脳内彼女を品定めして顔をしかめていた僕に彼が助言を出す。
僕は頭の中に繰り広げていた学校の校舎をしまい、昨夜見たテレビを思い起こした。昨日は風呂上がりにリビングで歌番組を見たのだ。僕が好きなアイドルグループが出るから。
「『ネコロマンサー』知ってる? 僕、あのバンドの安藤さんが好き」
ネコロマンサーは、最近アニメに主題歌を提供して人気が高まったバンドで、僕はこのバンドがインディーズだった頃から好きだ。ビジュアル系ロックバンドで、化粧や衣装も派手だったのだけれど、メジャーデビューしてからは僕のお小遣いでも買えそうなTシャツとジーンズといった格好でメディアに露出するようになった。昔からのファンの間ではいろいろといわれてるみたいだけど、僕は今の「ネコロマンサー」の方が気に入っている。
最初のコメントを投稿しよう!