ゾンビになった彼と不甲斐ない僕

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 彼は真面目にそう返すと、ブラックサンダーの袋を手の中でクシャクシャと丸めてブレザーのポケットに突っ込み、僕の顔をまじまじと眺める。 「じゃあさ、ジュンはどんな子が好きなの?」  その口調はまるで取り調べをする警察官のようだ。 「どんな子って?」 「ほら、どんな顔の子が好きとか、短い髪型が好きとか、あるだろう?」  僕はもう一度脳内の女の子たちを掘り起こす。  どの子も顔がわからない。  髪型は……長い子も短い子もいた。 「好きなアイドルとか、女優は?」  脳内彼女を品定めして顔をしかめていた僕に彼が助言を出す。  僕は頭の中に繰り広げていた学校の校舎をしまい、昨夜見たテレビを思い起こした。昨日は風呂上がりにリビングで歌番組を見たのだ。僕が好きなアイドルグループが出るから。 「『ネコロマンサー』知ってる? 僕、あのバンドの安藤さんが好き」  ネコロマンサーは、最近アニメに主題歌を提供して人気が高まったバンドで、僕はこのバンドがインディーズだった頃から好きだ。ビジュアル系ロックバンドで、化粧や衣装も派手だったのだけれど、メジャーデビューしてからは僕のお小遣いでも買えそうなTシャツとジーンズといった格好でメディアに露出するようになった。昔からのファンの間ではいろいろといわれてるみたいだけど、僕は今の「ネコロマンサー」の方が気に入っている。     
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