ゾンビになった彼と不甲斐ない僕

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 人にも勧めやすいし、友達もライブに誘いやすいからだ。  僕は刹那系や煽動系の曲が多いこのバンドの中でも、作詞作曲をしている安藤さんが大好きだった。  そのままネコロマンサーについて話を続けたかったが、僕は話の途中だったことに気がついて友達を見る。  彼は苦笑いを浮かべていた。  ネコロマンサーに気持ちがいきすぎて、何かおかしなことでも口走ったのかもしれない。 「あ、ごめん。イチは興味ないよな?」  友達は、ハジメという名前なのだが、漢字で一と書いてハジメと呼ぶので、僕は彼をイチと呼んでいる。  彼は苦笑したまま構わないと首を横に振った。 「別にいいよ。ジュンがネコロマンサー好きなのは知ってるし」  そう言って彼は少しだけ笑う。僕はその時の、少し寂しげに見える彼の微笑みが好きだった。どことなく、安藤さんの顔にも似ている気がする。一番お気に入りの安藤さんの写真は、口元にほのかな笑みを浮かべたまま遠くを見つめているものだ。  もう一度イチの顔を見る。やはり安藤さんに似ていると思う。  彼は安藤さんの面影がある顔に微笑みを浮かべたまま僕にこういった。 「だけどな、ジュン。俺が聞きたかったのは女性アイドルや女優の好みなんだけど」 「あ……」
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