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〔夏の終わりの物語〕
第一章〔始まり〕
ドゥルン、ドゥルルン。まだ暑さの厳しい8月の終わり、オートバイの音がこだまする。
「ちょっと、出かけて来る。」
「お兄ちゃん、どこ行くの?もうトラック出ちゃうよ!」
まるでアニメから飛び出してきたような萌え声が聞こえて来る。
3つ下の妹だ。血の繋がりさえなければ、きっと惚れていたであろう。
家族自慢の妹である。
「先に行ってていいよ、あとから行くから」
俺が答えると
「じゃあ、ついでにタイヤキお願い、白いやつ。
隣の明菜ちゃんにあげるんだから」
となりの明菜ちゃんとは、引っ越し先の隣の家にいる、妹とと同じ年の女の子の事である。
早くも引っ越しで友達を作ってるとは、なんとも出来過ぎた妹である。
親父の「妹の爪の垢でも飲ませたい」という俺に対するあのセリフがよくわかる気がする
ま、妹のあの声で頼まれると断る理由が見付からない。
手を挙げてピースで答える。
「なにカッコつけてんだか…」
妹の心の声が聞こえたような気がした
家の外には何人も女の子が。中には男の子もちらほら。
みんな妹の同級生である。転校する妹を見送りに来てくれたみたいだ。
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