兆し

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兆し

 フフフフ……… 「ん?」  笑い声が聞こえた気がし、俺は振り返った。けれど、振り返った先には誰もいない。 「どうした?」  後ろを向いていた俺に、横にいる立原(たちはら)が聞いてきた。首を傾げながら返事をする。 「う…ん……。今、何か聞こえなかったか?」 「何かって、何?」 「笑い声」 「は? 俺には何も聞えなかったけど?」 「あれ? じゃあ、気のせいだったか……」   髪をぐしゃぐしゃと掻き回し、顔を前に戻す。すると、ニヤリと笑う立原が俺の前に回り込んできた。 「……なんだよ……」 「お前、そりゃアレだ。花子さんだよ」 「ハナコさん?」 「え? 和泉、知らねえの? すっごく有名な人じゃん」  有名人のハナコさん???  頭の中に疑問符が浮かぶ。名前からして同級生の誰かじゃなさそうだし、有名な人って言い方をするってことは先生でもなさそうだし……。 「……え? 誰?」 「ふっふっふ。知らないんなら、教えてやる。花子さんはだな、白いブラウスに赤いスカートを履いた、おかっぱ頭の可愛い女の子で……」  言われて思い出した。どこの学校にもある『花子さん』という怪談。 
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