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目覚めた力
「ぶえっくしっっ」
堪えようとしたけれど結局出てしまったくしゃみは、中途半端な分、間抜けだった。教室中の視線を集めてしまう。
「連絡は以上ね」
五十嵐先生が手元に落としていた視線を上げた。同時に俺も顔を上げたのだが、彼女を直視することができず、横を向いた。
やっぱり目を合わせることができない。今朝までは何ともなかったのに、保健室で寝てから、先生の見方が変わってしまった。
―和泉くん、起きてる? 入ってもいい?
―うわっ
カーテンが開けられた時、思わず叫んでしまった。その場から逃げたくなるような不快感に襲われ、身体を動かしたところ、自分の位置が悪かったようだ。バランスを崩して、ベッドから床に転がり落ちてしまった。
身体を打った痛さで、鳥肌と不快感は消えた。だけど。大丈夫? と身体を支えてくれた先生の手。シャツの上にあるにもかかわらず、その手はとても冷たかった。それがすごく気持ち悪くて、我慢ができなかった俺は、思わず先生の手を振り払ってしまった。
「風邪が流行っているみたいだから、身体に気をつけるように」
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