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割れた封印
音楽室のある一階へと階段を駆け下りていく。
…フフフ……楽しみだよ………
「え?」
耳元を掠める笑い声。思わず、足が止まる。
「どうした?」
「また、笑い声が……」
立原の問いかけに答えながら、周りを見回してみる。
……久しぶりだね……
え?
声がした方を振り向けば、先ほど降りてきた三階の廊下に、一人の少年が立っていた。天窓から降り注ぐ光で逆光になっている。なのに、目を細めなくても、その少年が微笑んでいるのがわかった。
『久しぶりだね……五樹……』
口が動いていないのに、言葉が俺に届く。同時、また不思議な感覚に襲われた。
俺の眼前には、廊下の少年がいた。彼に向かって、自分は問いかけている。
―家を出るのか?
―今日ね、人類には捕食者がいない、っていう面白い話を聞いたんだ
―は? 何だよ、いきなり
―僕ね、それを聞いたら、人類の捕食者になりたくなっちゃったんだ
無邪気な笑顔。俺は思わず息を呑んだ。次の瞬間。
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