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美しき歌姫のワルツ 2
朝の教室に甲高い元気な声が響く。
「今週の土曜日にバレエの発表会があるんですって。行きましょうよ」
彼女は鬼ヶ島桃。苗字は鬼ヶ島。色々あって天界からやってきた元気な天使である。名前は自分で付けたものである。ドジ。
「面倒くさい。土曜は映画見に行きたいんだよ。つーか、暇でも行かねー」
彼は鬼ヶ島鬼貫。名前は「おにつら」と読む。鬼のような面構えの不良である。しかし、実のところ怖いのは顔だけである。
彼は(ドジな天使のせいで)天界の武器を集めるという(面倒で厄介な)大役を担う(羽目になった不幸な)一般人である。しかも当のドジは彼の家に強制的に居候している。
「おや、つれないですね。浦吉殿の妹君も出演なさるのですが」
会話に割り込んできたのは島田亀代。彼女は桃のドジのせいで後追いで武器集めに参加することになった天使であり、桃の上司である。なお、天使には年齢という概念が存在しない。いくつになっても乙女の姿のままなのである。
「浦島の妹ォ?バレエなんかやってたのかよ」
「乙姫殿です。興味が出てきましたか?」
「これは行くしかないわね!」
「うるせえ、ドジ」
「ぐすん」
「女の子泣かせるなよ、オニ」
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